私自身、単語集を使って単語を覚えた経験はありません。語彙力は英英辞典を使って伸ばしました。英語を読んで、知らない語を英英辞典で調べるという作業を通じて語彙力が付きました。初めは、Oxford Student’s Dictionaryから入って、Oxford Advanced Learner’s Dictionaryに移行しました。今でも知らない単語はOxford Advanced Learner’s Dictionaryで調べます(セイコーの電子辞書に入っているバージョン)。
なので、私は英英辞典推進派です。ただし、だからといって単語集否定派という訳では決してありません。TOEICを目標とした英語学習における単語集の利点も十分心得ています。TOEIC対策の単語集を3冊も出していますから。あともう一冊、近いうちに書く予定ですから。
TOEICでは、同じ語句が繰り返し使われます。そのTOEIC頻出語句を知っていると問題が楽に解けます。初心者の方でTOEICの問題を解こうとしても、知らない単語ばかりで全然解けないという方は、上に挙げたようなTOEICに焦点を絞った単語集を使い、とりあえず頻出語彙をマスターすることお薦めします。その際、ただ単に「この単語はこういう意味」という「英語→日本語」の置き換えをするのではなく、例文を音と一緒に覚えると効果が倍増です。是非、例文ごと、何回も声に出す練習をしてください。リスニングの練習にもなりますし、記憶にもよく残ります。また、英語の文の構造パターンを体に刷り込むことも出来ます。このListen & Repeat(聞いて繰り返す)の練習を語彙学習の中心に据えていただきたいと思い、「新TOEIC TEST ウルトラ語彙力主義」
ただし、単語集には限界があります。頻出語句をマスターした後は、費やした努力に対してTOEICの得点が上がる率が急激に減ります。TOEICには、何回も繰り返して出る単語もありますが、まれにしか出ないものもあります。まあ、本当によく使われるのは、the, of, to, in, for, I, you, andという類の語なんですが、このような中学で学習する基本的な1000語を抜いたら、TOEICの「頻出語」として、単語集に入れる価値のあるものは、おそらく1000語ほどです。なので、例えば語彙力が中学で習う1000語レベルの学習者が、TOEIC頻出語1000を覚えて2000語レベルの語彙力になったら、スコアはぐんと伸びるでしょう。400点前後から200点またはそれ以上伸びても不思議はありません。このレベルの学習者にとって、単語集を使った学習は非常に有効です。しかし、既に使用頻度の高い単語を一通り覚え終えた人が、使用頻度の低い単語の学習に移行した場合、単語を覚えることに費やした努力が得点に反映されません。それはなぜかというと、使用頻度自体が低いので、せっかく覚えた単語がTOEICにあまり出てこないからです。
また、著者がどういう基準で収録語彙を選んでいるかという点も問題です。単語集のタイトルにTOEICと入っているからといって必ずしもTOEICで役立つ語句が入っているわけではありません。TOEICを目指して学習しているのに、TOEICに出ない単語を必死で覚えるのって、効率が悪くありませんか。
でも、TOEICに役立つ語彙かどうかというのは、学習者が見てわかるものでもありません。なので、単語集を選ぶ際の基準にはなり得ません。そこでTOEICオタクの私が、上級学習者(800点〜)の方にTOEICで必要な語彙力を付けるのに役立つ書籍をご紹介します。それは3冊の新公式問題集シリーズです。
この3冊はTOEICの問題を作っているETSが出したもので、あらゆる面で実際のTOEICに一番近い模試です。語彙もはずれがありません。すべてTOEIC的な語句によって構成されています。この3冊に入っている模試6セット中の単語をすべて覚えれば、語彙力の面では900点を超えるのに十分でしょう。
それから、音声CDを使ってListen & Repeatの練習もしましょう。これも語彙学習の一環です。単語を覚えるというのは、「英語→日本語」の置き換えが出来るようになることではありません。音を聞いたときにわかるようにすることも語彙学習の重要な要素です。
さらに、パート3の会話やパート4のトークを重点的にやることをお薦めします。何回も繰り返して声に出す練習をして、会話やトークを暗記するくらいになると強いです。「この語は、こんな会話/トークの中で、こういう意味で使われ、こういう風に発音されている」というのを知ることも語彙学習の一環です。それから語彙学習とはずれますが、公式問題集の声優は実際のTOEICにも登場するので、彼らの声に慣れておくと本番で有利です。
リーディング・セクションは音声がありませんが、それでも声に出して読むことをお薦めします。声に出すことで、英語の息吹というか、息遣いというか、呼吸というか、感覚というか、ダイナミズムというか、speech feelingというか、ちょっと上手く言葉では説明できないんですけど、そのような英語の「気」のようなものを感じることが出来ます。「英語→日本語」の置き換え中心の語彙学習では、それが出来ません。というか、日本語が介在すると英語の「気」が消えてしまいます。
以上が私のTOEICに向けた語彙学習に関する見解です。この記事はmasamasaさんを念頭に置いて書きましたが、他の学習者の方にも参考にしていただけたらと思います。ただし、英語学習にはいろいろなやり方があり、人によって合う方法、合わない方法があるということも付け加えておきます。自分で効果があると信じることが出来る方法を採用するのが一番効果的です。私が上に示した学習法はあくまでも私が良いと考える方法であって、それが絶対というわけではありません。例えば「そんなこと言われても、公式問題集をやるより、スピードマスターをやったほうがいいに決まっている」という確信のある方は、スピードマスターをそのまま続けた方が効果的でしょう。
おまけ:以下のリンクは、新公式問題集3冊(模試6セット)の語彙の使用頻度を調べたraw dataです。どの語が何回出てきたかがわかります(ちょっとわかりづらいですけど)。
語彙分析参考資料

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今回は、渾身の記事ですね。
初級レベルは、TOEIC頻出語をしっかり覚える
中級レベルは、公式問題集に出ている語彙を文脈の中で覚える
そして大切なのは、日本語で意味を言えるレベルではなく、Listen&Repeatをしてしっかりと身に付けること、という風に私は理解しました。
先生のご意見に賛成です。私も公式問題集の使用頻度を分析したことがありますが、1回ぐらいしか登場しない難しめの語彙を知らなくても問題を解けるようになっていますからね。
たしかにパート5で、1,2問難しい語彙を選ばせる問題が出ることがありますが、TOEICが要求しているのは、あくまで基本語の習得、文脈の理解ですから、TOEICで900取るくらいまでは、あまり気にする必要はないかもしれません。
先生へのリクエストですが、TOEICでは基本語彙が学校英語とは違った意味・文脈で使われることが少なくないと思います(board meetingで「役員会」、place an orderで「注文をする」など)。今後、この点に絞った単語集をまとめていただくと学習者は大変助かると思います。(もちろん、ウーゴとコーパスをしっかりやれば十分ですが。。。)
TEX加藤さんの「公式3冊とTactics for TOEICの二つの模試も加えて、それを繰り返し解くことと」という意見には、賛成です。
私が以前英検準1級の受験のために公式単語集を隅々まで覚えましたが、問題に出ない単語が圧倒的で学習した分の見返りがなかったことを思い出します。
それだったら、英字新聞や様々なジャンルの英文に接したり過去問を解いていた方が良かったという苦い経験があります。
こと、TOEICに関しても、新TOEIC導入初期は「明らかにTOEICにでないだろう」という単語集が書店に出回っていました。
そして最近ようやくきちんとした分析が進んで、的にあった単語集が揃うようになりました。初級のうちの私はもっと単語集を生かして覚えていけば伸びるはずだと思います。
ただ、英検準1級試験での苦い経験から、ある程度のスコアを超えたら、過去問や公式問題集重視で勉強した方がいいと思っています。
まだ偉そうに言える程、TOEICのスコアもないですが、英検もTOEICも何か語彙習得には共通点があるように思います。
また単語集にばかり集中せず、良質な沢山の英文に接することも同時に大事だと思っています。TOEICなら、公式問題集などのリーディングの文章もいいリーディングの材料だと考えています。
コメント、ありがとうございます。
>初級レベルは、TOEIC頻出語をしっかり覚える
中級レベルは、公式問題集に出ている語彙を文脈の中で覚える
そして大切なのは、日本語で意味を言えるレベルではなく、Listen&Repeatをしてしっかりと身に付ける
はい、その通りです。それが私の言いたかったことです。
>1回ぐらいしか登場しない難しめの語彙を知らなくても問題を解けるようになっていますからね。
そうです。問題を解くのに一字一句すべて知っている必要はありません。
>先生へのリクエストですが、TOEICでは基本語彙が学校英語とは違った意味・文脈で使われることが少なくないと思います(board meetingで「役員会」、place an orderで「注文をする」など)。今後、この点に絞った単語集をまとめていただくと学習者は大変助かると思います。
そうですね。次の単語集を作るときはその辺、常に意識するようにします。もちろん、ウーゴやコーパでも基本語彙のTOEIC的な用法は学べるようになっていますが。
貴重なご意見、ありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
>TEX加藤さん
コメント、ありがとうございます。
本番に近いという点では公式問題集の右に出る書籍はありません。
Tactics for TOEICはあまり詳しく見ていなんですが、ETS公認なので信用できると思います。
TEXさんの英語学習の軌跡、とても興味があります。
今度、お会いしたときにでも聞かせていただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
>Chaiさん
単語頻度表にはListeningのTranscriptも含まれています。
上級者はTOEIC対策としては模試を使ったトレーニングがいいと思います。
あとはTOEICから離れて、総合的な英語力を上げる訓練が必要ですね。
>hopeさん
コメント、ありがとうございます。
とりあえず、ウーゴに入っている頻出単語をすべて覚えるようにしてください。
そうすると公式問題集をやる際、解きやすいと思います。
「ある程度のスコアを超えたら、過去問や公式問題集重視で勉強した方がいい」という考え、私も同じです。
また、「良質な沢山の英文に接すること」は英語力を伸ばす重要な鍵です。
英語をたくさん読むようにしてください。
その際、易しいものを選び、楽しみにながら読むようにすると効果が上がります。
Graded Readersがお薦めです。
がんばってくださいね。
私も皆さんに便乗して質問です。
今、英検1級取得を目指しているのですが、
神崎先生は英検1級を受験する際もパス単などの単語帳を利用せずに合格しましたか?
plebeian, poignant,insipid,nadir,pawnなどのペーパーバックを読んでいてもなかなかお目にかかれない単語も読書の中で覚えましたか?
ご指導よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
>神崎先生は英検1級を受験する際もパス単などの単語帳を利用せずに合格しましたか?
英検を受ける際は、旺文社の過去問3年分(6セット)をしました。
単語帳の類は一切使いませんでした。
>plebeian, poignant,insipid,nadir,pawnなどのペーパーバックを読んでいてもなかなかお目にかかれない単語も読書の中で覚えましたか?
ここに挙げていただいた単語で私が知っているのは、poignantとpawnだけです。
私は英文学のコースを取っていたのでpoignantはなじみのある語です。
また、pawnは「質屋ってなんていうんだろう」と思いpawn shopを調べたときに覚えました。チェスの駒という意味を知ったのはその後です。
私の語彙力はその程度なので、英検1級の語彙問題は知らない単語が多くありました。
ちなみに「語い・熟語・文法力」の項目は30問中23問正解でした。
英検1級は7割弱取れていれば受かるので、語い問題を完璧にする必要はありません。
私が受けた平成9年度第2回の試験では、122点満点で79点が合格点でした。ちなみに私は85点でした。
英検1級を目指すのであれば、英語の書籍、新聞、雑誌を読む、映画やテレビ番組を見る、ラジオ番組を見る、英語を使ったコミュニケーションをする機会を持つなどを積極的にするようにしましょう。
あとは過去問をやるくらいでよいのではないでしょうか。
がんばってください。
参考にさせていただきます!

